| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) F02-09 (Oral presentation)
水中や水面を移動する際、多くの昆虫は泳いで移動する。遊泳行動は水生昆虫だけでなく、バッタやゴキブリ、チョウの幼虫など、様々な陸生昆虫でも観察されている。こうした陸生昆虫における遊泳行動は静止した水面上で観察されており、流れのある水面での遊泳行動は注目されていなかった。ただし、陸生昆虫の中でも川辺に生息する種では、大雨による増水時や捕食者からの逃避時に流水面上で泳がなければならない状況に遭遇しうる。そこで、河川敷に生息するコオロギの一種、ハマスズDianemobius csikiiを用いて、流水面における遊泳行動を観察した。
流速を調整できるように改良した流しそうめん器にハマスズのメスを入れ、水面上での行動を10分間観察した。流速には静水面におけるハマスズの平均の遊泳速度と同程度、それより遅い速度、早い速度の3段階を用意し、流速なしと合わせて4つの処理を割り当てた。実験の結果、ハマスズは流れのある水面上でも泳ぐことが確認された。流速に関わらず、多くの個体が10分以内に実験装置の垂直な壁面を登り、水面から離脱した。そのため、ハマスズは流れのある水面を泳いで移動し、上陸できることが示された。