| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) F03-02 (Oral presentation)
動物による種子散布は、発芽に適した場所に種子を散布するなど、植物に特有の利益をもたらす。種子が動物の体表に付着することで運ばれる付着種子散布は、動物による種子散布のひとつであり、鉤状の構造や粘着質によって種を限定せず様々な動物種の体表に種子が付着できる。したがって多くの動物種が散布者として機能すると考えられるが、実際の付着散布において動物と植物との間に存在する種間関係は未解明な部分が多く、動物種ごとの散布への貢献を評価できていない。これまでに、付着する種子量の評価が哺乳類を対象に進められてきた一方で、鳥類を対象にした事例は少ない。鳥類の中でもキジ科の種は、主に地表で採餌するため付着散布植物と接触する頻度が高く、付着散布者として機能していると考えられる。本研究では、キジ科鳥類による付着種子散布を定量的に評価することを目的とし、日本の森林から草地にかけて分布するキジとコジュケイを対象に調査を行った。茨城県の二次林の林縁部において、剥製に持ち手を取り付けた模型を押して植生内を10m通過させ、剥製の体表に付着した種子を体の部位ごとに採取した。この付着調査を10月と12月に実施し、植物種ごとの種子の付着量を体部位、鳥類種、季節の間で比較した。その結果、合計4種(イノコヅチ、チヂミザサ、ヌスビトハギ、ミズヒキ)の植物種の種子が付着し、キジには合計185個(平均18.5個)、コジュケイに合計250個(平均25個)の種子が付着した。体部位、鳥類種、季節の間では付着量に統計的に有意な差は見られなかった。本研究によりキジ科鳥類が付着種子散布者として機能することを初めて明らかにすることができた。キジとコジュケイは体の大きさが異なるものの、両種の間で付着量に差はみられなかった。今後は、種子の落下に関わる要因等も考慮して、2種の付着散布にける量的貢献を評価することが望まれる。