| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) F03-07 (Oral presentation)
植物の形質はしばしば種特異的であり、植物上の群集形成のための環境フィルターとして機能しうる。同時に、最初にコロニーを形成する節足動物の種の同一性は植物個体間で異なり、それが後にコロニーを形成する節足動物や群集の形成に影響を与えるだろう(以下、先住効果という)。しかし、先住効果による個体間の群集形成の多様化が、初期段階における植物の形質特異的な環境フィルタリングと同様に重要であるかどうかは依然として不明である。本研究では、植物揮発性有機化合物(PVOCs)が群集形成の初期段階において環境フィルターとして重要な役割を果たし、群集形成過程が純粋に確率的なものになるのを防いでいる可能性を提案する。この仮説を検証するため、実験圃場にある6種のヤナギ個体について、節足動物群集の形成を短期間だが高頻度にモニタリングした(9日間で19回の観察)。実験開始前にPVOC組成を分析し、実験開始1~2日目に発生した節足動物組成(初期コロニー形成者群集)および実験開始8~9日目に発生した節足動物組成(後続コロニー形成者群集)と比較した。また、意図せず、2日目の夜にシカの草食が発生した。距離に基づく統計は、PVOC組成が植物種特異的であることを示したが、初期コロニー形成者とその後のコロニー形成者の群集組成のどちらも、植物種の同一性では説明できなかった。むしろ、プロクラステス分析では、PVOC組成と初期コロナイザー群集の組成の両方により、その後のコロニー形成者の群集を説明できることを示した。さらに、PVOCとその後のコロニー形成者の群集との関連は、シカの食害が見られた個体でより強かった。これらの結果から、PVOCは初期群集形成に広範囲な影響を及ぼすだけでなく、確率的な移入によってもたらされる先住効果も持ち、植物種の同一性は群集の実際の構成に弱く間接的な影響しか及ぼさないことが示された。