| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) F03-08 (Oral presentation)
雌雄異花植物の花では、花の性によって花上の微生物組成が異なる場合がある。花の性別間の微生物群集の違いの特徴や、それぞれの群集の形成過程、機能は明らかでない。本研究では、雌雄異花で動物媒のゴーヤを用い、雌雄の花の真菌群集の特徴を明らかにし、訪花動物群集と花上真菌群集の関連について検討した。ゴーヤの雌花と雄花のそれぞれ10花程度について、開花している日中のビデオ撮影により訪花動物類を網羅的に記録した。そして、これらの花の花弁、繁殖器官(葯または柱頭)のDNA抽出物から、真菌類のアンプリコンシーケンスにより真菌群集組成を解明した。花上の真菌群集組成は、花の性と部位の組み合わせ4つの間で異なった。花弁は繁殖器官に比べてTremellomycetes(シロキクラゲ綱)が多かった。葯と柱頭に特徴的な分類群は、それぞれ、Saccharomycetes(半子嚢菌綱)とSordariomycetes(フンタマカビ綱)であった。雄花は雌花に比べUstilaginomycetes(クロボキン綱)が多く検出された。訪花動物類の訪花数は、報酬(花蜜、花粉)のある雄花において、雌花よりも多かった。訪花動物の分類群別では、トラマルハナバチ、ハラナガツチバチ類、コハナバチ類で雄花への訪花が多かったが、アリや微小動物類(5ミリ程度未満)では差がみられなかった。Mantel testの結果、繁殖器官では、Bray-Curtisの距離による花間の真菌群集組成の違いは、花間の訪花動物群集の違いと相関する傾向があったが、花弁では相関はなかった。本発表では、それぞれの性や器官に特徴的な真菌類の機能と、訪花動物類の影響の可能性について考察する。