| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) G01-04 (Oral presentation)
砂浜海岸では海浜植物による飛砂の捕捉・堆積の結果、砂丘が形成される。海岸砂丘は特有の生態系を有し、多様な機能を発揮する一方,開発や利用による劣化・消失がみられ、生態系の保全・復元が求められている。本研究は,復元にあたり飛砂防止工法の草方格と堆砂垣に着目した。草方格は砂面を鎮静させ植栽導入を図る工法、堆砂垣は飛砂を堆積させ砂丘を形成する工法で、設置後に堆砂が生じる。この堆砂環境は海浜植物の侵入・定着基盤となると考えられるが、設置により成立する生物群集は着目されていない。そこで、設置による生物群集の変化を明らかにすることを目的とした。また残存生態系との比較から、復元状態を評価した。調査地は北海道石狩市川下海水浴場で、調査区は海水浴場として整地されている試験区、砂丘が残存している残存区、約20年前に砂丘が造成された造成区とした。草方格と堆砂垣は、試験区に2021年11月に設置し、設置前後3年間の地形と生物群集の変化を記録した。地形調査はUAVを用いた航空写真測量を行った。生物群集は植生と節足動物群集を対象とし、各調査区で汀線から内陸に向けて垂直に調査測線を設置した。測線に沿って植生調査はベルトトランセクト法で、節足動物群集調査はピットフォールトラップ法で行った。その結果、設置した草方格や堆砂垣で堆砂がみられ、堆砂垣の根元に堆砂が集中した。植生は増加傾向を示し、草方格が最も早く進行した。しかし、2年後の試験区の植被率は残存区の10%程度であった。節足動物群集構造については、設置前は草原群集と砂地群集に二分され、試験区は全て砂地群集であったが、2年後は試験区の草方格や堆砂垣周辺で砂地群集と異なる群集構造がみられた。総じて、試験区の生物群集は、まだ途上であるが復元傾向を示していた。残存区と造成区の生物群集は類似した傾向がみられ、試験区が将来的に残存区に類似する可能性が示唆された。