| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) G01-05 (Oral presentation)
海草藻場や海藻藻場は、他の生物への生息環境の提供や地形の構築などを行い生態系の基盤となる種から構成されることが多く、高い生態系サービスを有する沿岸域の重要な植生の一つである。しかしながら、これまでに日本においては沿岸域の開発や水質悪化、海水温の上昇等の影響による海草藻場・海藻藻場の減少が多くの地域で報告されている。気候変動の影響による藻場の構成種の変化や藻場の衰退が予測される中で、適切な対策を講じる必要がある。そこで、国内に分布する海草や大型海藻の代表的な種を選定し、現状の分布を適切に把握するとともに、どのように利用・保全・管理されているかを全国規模で整理した。今回対象とした種は基盤種と想定される種を中心に、砂泥性海草(アマモ、コアマモ)、岩礁性海草(エビアマモ、スガモ)、南方系ホンダワラ類(キシュウモク、ヒイラギモク)、温帯性ホンダワラ類(イソモク、アカモク)、温帯性コンブ類(アントクメ、カジメ)等である。分布情報はデータペーパーやOBISを参照するとともに、文献収集と現地調査を適宜組み合わせて整理した。利用については漁業資源として共同漁業権の対象種、観光資源として観光計画に関する行政文書、国立公園のホームページ、ダイビングショップのブログを使用した。保全に関してはモニタリングと保全活動の実施場所、内容を整理した。管理はレッドリストや漁業調整規則、国立・国定公園の海域公園地区における採捕規制に該当しているかを確認した。これらの情報を統合することで、各対象種や各都道府県における分布・利用・保全・管理の間のギャップを評価した。水温上昇の影響により海草や大型海藻の分布域の大きな変化が予測される中で、ギャップの有無を把握するとともに、ギャップがある場合にはそれを埋めるような取り組みが今後重要である。