| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) G01-07  (Oral presentation)

抗ウイルス薬投与停止後の感染症リバウンド
Rebound after stopping antiviral drugs

*林玲奈(九州大学), 原朱音(富山大学), 巌佐庸(九州大学)
*Rena HAYASHI(Kyushu Univ.), Akane HARA(Toyama Univ.), Yoh IWASA(Kyushu Univ.)

抗ウイルス薬の投与が中止された後に、一部のウイルスは「再陽性化(リバウンド(再陽性化))」を示す場合がある。COVID-19で薬剤投与停止後、27%の人が症状を、12%の人がウイルス量のリバウンドぶり返しを示した。本研究では、薬剤投与下で形成される免疫が、薬剤投与がない場合よりも弱いためくなるために、ウイルスのリバウンド再陽性化が発生生じるする条件を検討した。
[仮定] 患者が抗ウイルス薬の投与を受けている間、ウイルスの増殖率が低下し、宿主内のウイルス粒子の数が減少するとし、症状がの緩和されるが起こる。ウイルスの粒子数が少なく、検出限界以下まで抑制されても、ウイルスは体内から完全に駆除されない場合がある。が症状が回復したと判断し、抗ウイルス薬の投与を停止すると、ウイルスの増殖率が高まる。免疫記憶の強度つよさにより、ウイルス粒子数が増加する場合としない場合とがある。前者が「リバウンド再陽性化」であるとして、どのような条件状況で生じやすいのかを数理的に解明した。
[手法] ウイルス粒子感染細胞数V、細胞傷害性T細胞(CTL)数H、および免疫記憶細胞数Mのダイナミクスの単純な数理モデルを分析した。そして薬剤の投与中止によって、ウイルス粒子感染細胞数が増加する条件を探求した。
[結果] 長期間にわたって薬剤を投与すると、抗ウイルス薬の存在と不在におけるウイルス増殖速度の比率が「ぶり返し閾値」を上回る場合にウイルスのリバウンド再陽性化が生じた。ぶり返し閾値がパラメータにどのように依存するかを解析した。投薬中止後のリバウンド再陽性化は、[1]薬剤がウイルスの増殖を効果的に抑制する場合、[2]薬剤投与中止が遅い場合、[3]免疫応答を直接活性化するプロセスが免疫記憶形成を経由する間接的なプロセスに比べて強い場合に、より起こりやすいことが明らかになった。


日本生態学会