| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) G01-09  (Oral presentation)

宿主に対する産卵と捕食のタイミングの分化がもたらす捕食寄生者2種の共存
The coexistence of two parasitoids resulting from the timing differentiation about oviposition and predation on the host

*一色竜一郎(京都大学), 入谷亮介(理化学研究所)
*Ryuichiro ISSHIKI(Kyoto Univ.), Ryosuke IRITANI(RIKEN)

 自然界で普遍的にみられる寄生者の中には、最終的に宿主を直接殺して捕食する捕食寄生者と呼ばれるものが存在している。捕食寄生者はその生活史戦略をもとに2タイプに大別することができ、それぞれ殺傷型と飼い殺し型と呼ばれる。殺傷型とは、発達段階後期の幼虫を寄生の対象とし、産卵すると間もなく幼虫が孵化して宿主を捕食し始める戦略である。飼い殺し型とは、発達段階早期の幼虫を寄生の対象とし、産卵後も宿主が成長を続けることができる戦略である。ここで、飼い殺し型は殺傷型から派生して進化したとされているが、これら2タイプの戦略がそれぞれ安定的に存在しているかどうかについては自明でない。その条件を調べるためには、寄生者の生活史戦略の進化について考える必要がある。
 そこで、我々は捕食寄生者の寄生戦略の進化について調べるために、1種の宿主と1種の寄生者による2種系の個体群動態を表現する数理モデルを構築した。宿主のステージ構造と、産卵された発達段階早期の幼虫が寄生された状態で発達段階後期の幼虫へと成長するという経路が組み込まれている点が本モデルの特徴である。
 それぞれの進化形質の選択勾配を考えることで、生活史形質に対して生活史戦略がどのように変化するかを考察した。特に、殺傷型と飼い殺し型の戦略が進化的に有利になる条件をそれぞれ探った。


日本生態学会