| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-01  (Oral presentation)

樹木による揮発性有機化合物(BVOC)産生の季節性: 最適防御スケジュールとして
Seasonality of BVOC production by trees as the optimal defense schedule

*巌佐庸, 林玲奈, 佐竹暁子(九州大学)
*Yoh IWASA, Rena HAYASHI, Akiko SATAKE(Kyushu University)

 樹木は、さまざまな揮発性有機化合物を放出することで、高温・病原菌・植食者などの脅威に対して防御する。イソプレンは、強い日射による葉の高温障害からの修復を促進し、葉に高温ストレスへの耐性を持たせる。モノテルペン類は蜜柑などの果実の匂いで、病害虫に対する防御の効果がある。セスキテルペン類は、植食者の襲撃時に捕食者を呼び寄せる情報化学物質となる。BVOCの生産量は大きく、気候を改変する効果が注目されている。
 アラカシやマテバシイにおいて、イソプレン生産経路にある遺伝子の発現は夏にピークがあり、セスキテルペン類生産経路にある遺伝子の発現は春の展葉期にピークがあった。このようなBVOC産生の季節性を理解するため、植物にとって適応的な防御スケジュールを考えた。
[モデル]病害虫リスクや熱ストレスによって光合成器官(葉)の喪失を抑える効果があることに注目し、それらのリスクやストレスの到来が示す季節的パターン、揮発や分解による消失速度、BVOC生産のコストなどによって、BVOCの生産スケジュールを植物が最適に選ぶとする。モデルの仮定は以下の通りである。
[1] 熱ストレスや病害虫のリスクは夏に強い。
[2] これらによる障害はBVOCが存在すると、軽減される。
[3] 葉は春(t=0)に一斉に展開し、その後は追加されず、t=Tで落葉する。
[4] 葉のコホートによる光合成収量からBVOC生産のコストを差し引いた量を最大にするBVOC生産スケジュールを考える。
揮発性の高いイソプレンを念頭においてポントリャーギンの最大原理を用いて解析した。
[結果] 熱ストレスが夏にピークを持つと、イソプレン生産も夏にピークを持つ。夏に光合成速度が高くなったり揮発性が高くなる場合には、イソプレン生産のピークが春もしくは初夏にシフトする。以上から観測されたパターンは夏の熱ストレスに対応するためと結論した。


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