| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) G02-06  (Oral presentation)

リターの分解速度が平衡状態におよぼす影響はリターの流出入パターンに依存する【B】
Litter transport governs sensitivity of equilibrium to decomposition activity【B】

*山内淳(京都大学), 伊藤公一(北海道大学), 望月敦史(京都大学)
*Atsushi YAMAUCHI(Kyoto Univ.), Koich ITO(Hokkaido Univ.), Atsushi MOCHIZUKI(Kyoto Univ.)

植物リターの分解は、生態系における物質循環を規定する重要な過程であると考えられる。リターの分解は微生物が介在する過程であり、温度や湿度などの環境要因によって様々な影響を受ける可能性がある。環境変動がリター分解の変化を通じて生態系にどのような影響を与えるかということは、地球温暖化などの影響を考える上でも重要な課題である。この問題について、コンパートメントモデルによって窒素循環をモデル化し理論的な解析を行なった。土壌、植物、植食者、捕食者、そして植物リターに含まれる窒素量の動態について、様々な構造のモデル、すなわち生態系ネットワークを想定した。それらの仮想的なネットワークに対して、近年、化学ネットワークの解析のために開発されたSSA(Structural Sensitivity Analysis)という解析手法を適用した。この手法は、ネットワークのコンポーネント間の流れがどのコンポーネントに依存するのかという依存関係だけの情報から、流量を規定するパラメータの摂動がネットワークの平衡状態にどのように影響するのかを示す手法である。その解析から、リターの分解速度の変動が平衡状態に影響を与えるかどうかは、リターの流出入パターンによることが示唆された。すなわち、リターのバイオマスについて系外との移出入がない場合、一般にリターの分解速度の変化は系の平衡状態に影響を与えない。これは例えば、環境変動によるリターの分解速度の変化による生態系サービスへの影響を、リターの移出入を抑制することによって最小化することができる可能性を示唆しているかもしれない。


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