| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) G03-01  (Oral presentation)

細胞運動マシナリーを介した単細胞性シアノバクテリアと糸状性細菌の種間相互作用
Cell motility machinery involved in interspecies interaction between unicellular cyanobacteria and filamentous bacteria

*河野恵美, 春田伸(東京都立大学)
*Megumi KONO, Shin HARUTA(Tokyo Metropolitan Univ.)

 シアノバクテリアは酸素発生型の光合成細菌で、水圏環境に広く分布し、しばしば他種細菌と細胞凝集体を形成し共存している。50℃を超える弱アルカリ性の陸上温泉には始原的系統の単細胞性シアノバクテリアThermosynechococcusを優占種とするバイオフィルムを発達させている。本分離株は滑走運動能を有し細胞凝集性はなく、共存する糸状性細菌との細胞間相互作用が凝集体形成に寄与していると予想されてきた。本研究では、この好熱性シアノバクテリアの生態を明らかにするため、共存する糸状性酸素非発生型光合成細菌Chloroflexusとの共凝集性について解析した。
 ガラスバイアル瓶にシアノバクテリア培養液と糸状性Chloroflexus細胞を添加し、ハロゲンランプ光照射下50℃、ローラー式攪拌条件で振盪したところ、開始から4時間で、凝集体の形成が目視で確認できるようになった。顕微鏡観察の結果、糸状性細胞にシアノバクテリア細胞が絡み取られる様子が観察された。12時間後には、直径100 µm~200 μmの凝集体が多数形成していた。この細胞凝集体は強い振盪攪拌でもばらけなかった。共焦点レーザー顕微鏡観察では、糸状性細菌にシアノバクテリア細胞が極側で付着しているように思われた。このシアノバクテリア細胞は極に滑走運動マシナリーとして知られるピリ線毛を持つことが知られているため、ピリ線毛が凝集体の形成に関与している可能性を考えた。そこでピリ線毛の合成に関わる遺伝子の破壊株を作成し同様の試験を行ったところ、顕著な凝集体形成は見られなかった。一方、シアノバクテリアが光合成に利用する光波長をカットし、750 nm以上の長波長域の光条件で同様に試験したところ凝集体の形成は観察された。糸状性細菌は長波長域の光照射依存的に糸状性細胞が寄り集まることが知られている。
 以上から、糸状性細菌が寄り集まる際に、シアノバクテリアが細胞外器官を介して糸状性細菌を架橋することで強固な細胞凝集が形成されると考えられた。


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