| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) G03-02 (Oral presentation)
土壌微生物群集の構造とそれらを制御する要因を理解することは、地球規模の変化に対する陸上生態系の反応を予測する上で不可欠である。微生物バイオマスと組成は、局所的および景観的スケールでの非生物的要因(例えば、気候)に加えて、生物的要因(例えば、植物の形質)にも影響を受けることが知られている。また、土壌微生物の生理的および栄養的指標、例えばグラム陽性菌とグラム陰性菌の比率(GP:GN)が、局所スケールでの非生物的要因(例えば、温度)および植物の分類群と形質によく反応することが示されている。しかし、森林土壌の微生物群集の構造や特性が景観レベルでの非生物的要因や植物の形質にどのように変動し反応するかについては、よくわかっていない。本研究では、日本列島の広範囲にわたる年間平均気温、土壌タイプ、および植生をカバーする18サイトからのデータを使用して、森林における土壌微生物特性の景観スケールでの変動を説明するため統計モデルを適用した。土壌微生物特性はリン脂質脂肪酸(PLFA)分析によって評価した。その結果、真菌のPLFAと細菌のPLFAは、それぞれ土壌炭素(C)と土壌窒素(N)濃度によって説明された。植物形質(例えば、葉の乾物含量)も細菌PLFA濃度の変動を説明するのに寄与した。真菌と細菌のPLFA比は、土壌C:N比によって最もよく説明された。一方、微生物組成(PCA1軸)と生理的栄養的指標は、植物の形質(窒素や葉の乾物含量)にも影響を受けていたが、その変動は主に気温と土壌pHによって説明された。これらの結果は、景観スケールにおいて、森林の土壌微生物群集の構造と特性が非生物的要因や植物の形質と関連していることを示しており、地球温暖化が微生物の栄養生理的状態に影響を与えることを示唆している。