| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) G03-04  (Oral presentation)

気候変動と土地利用を考慮したシロアリによるメタン放出のグローバルな推定【B】
Global termite methane emissions have been affected by climate and land-use changes【B】

*伊藤昭彦(東京大学)
*AKIHIKO ITO(Univ. Tokyo)

メタンは二酸化炭素に次いで気候変動への影響が大きい温室効果ガスであり、その削減が重要課題となっている。グローバルなメタン収支には未だ不確実性が大きく、ソースとシンクの時空間変動を正確に把握することが、排出削減の着実な達成に不可欠である。シロアリは体内にセルロース類を分解する微生物を共生させており、それがメタンの放出源になっていることは以前から知られていたが、そのグローバル総量や時空間分布の評価には課題が残されていた。本研究では、近年のデータとモデルを用いてシロアリ起源のメタン放出量を評価した。まず、シロアリの分布域を観測データベースの分布に基づいて推定し、月平均最低気温が通年-8℃を下回らない地域と設定した。次に、単位面積あたりのシロアリのバイオマス密度分布を植生タイプ別の集計データと熱帯での植生生産力の経験式によって推定した。単位バイオマスあたりのメタン放出量(放出係数)は、測定データの頻度分布より無作為抽出を繰り返して分布を求めた。最後に、バイオマス分布と放出係数を乗じることで放出量を求め、グローバル総量として年間14.8 Tg CH4という推定結果を得た。1901年から2021年までの気象条件と土地利用変化を考慮することで時間的変化を再現したところ、森林減少や耕地転換などにより分布面積は漸減していたが、植生生産力に伴う基質の増加の効果によって総放出量は増加傾向にあった。その傾向は将来も続くと予想され、より多くのメタンがシロアリから放出されるようになる可能性が示唆されたが、その変化幅は設定条件に強く依存していた。


日本生態学会