| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) G03-05  (Oral presentation)

オイルパーム農園における二酸化炭素フラックスは何によって制御されるのか?
What controls carbon dioxide flux in an oil palm plantation?

*羽田泰彬, 熊谷朝臣(東京大学)
*Yoshiaki HATA, Tomo'omi KUMAGAI(The University of Tokyo)

東南アジア熱帯雨林域は世界有数の森林破壊地域である。中でもボルネオ島は森林減少・劣化の深刻なエリアの一つであり、大部分の天然林が1970 年代以降に人為的攪乱を経験し、より経済的価値の高いオイルパーム農園へと置き換わりつつある。この急速な土地利用転換は、大気と植生との間の二酸化炭素輸送(CO2フラックス)の変化を通じて、局地的な炭素収支を大きく改変する恐れがある。しかし、ボルネオ島の鉱質土壌に造成されたオイルパーム農園においてCO2フラックスの長期観測が行われた事例は存在せず、CO2フラックスを駆動する生物・環境要因に関する知見も乏しい。そこで本研究では、ボルネオ島北部沿岸の鉱質土壌に造成されたオイルパーム農園を対象に、3年間の気象・フラックス観測を実施した。その結果、純生態交換量(NEE)・総一次生産量・生態系呼吸量の平均年積算値はそれぞれ-7.6、35.2、27.9 tC ha-1 yr-1となり、NEEは隣接する天然林サイトでの同時期の観測値に匹敵した。一方で、オイルパームの植林から再造林までの25年間における炭素貯留量の時間変化を経験的モデルにより推定したところ、天然林と比較して25年生のオイルパームの総バイオマス量は約80%減少し、土壌有機炭素量は約30%減少した。このことから、オイルパーム農園の炭素固定能力は天然林と比べ大幅に劣ると考えられた。データ駆動モデルと説明可能な人工知能とを組み合わせた解析からは、全天日射量・土壌含水率・群落コンダクタンスがNEEを主に制御していることが示唆され、オイルパームのCO2フラックスは非生物的要因により駆動される側面が強いと推測された。


日本生態学会