| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) G03-07  (Oral presentation)

ヒノキ林における土壌面蒸発量の変動および蒸発散量への寄与
Soil Evaporation and Its Effects to Evapotranspiration in a Japanese cypress forest

*神谷有咲(京都大学), 小杉緑子(京都大学), Linjie JIAO(XTBG), 坂部綾香(京都大学), 渡辺陽樹(京都大学), 鶴田健二(LBERI)
*Arisa KAMIYA(Kyoto Univ.), Yoshiko KOSUGI(Kyoto Univ.), Linjie JIAO(XTBG), Ayaka SAKABE(Kyoto Univ.), Haruki WATANABE(Kyoto Univ.), Kenji TSURUTA(LBERI)

森林からの蒸発散過程は水資源貯留や洪水緩和へ関与するため,蒸発散量変動の要因解明は重要である.これまで閉鎖樹冠の森林における土壌面蒸発量はごく小さいとされてきたが,年蒸発散量の約14 %を占めるとの推定もあり(Tsuruta et al, 2016)実際は無視できない可能性がある.そこで簡易ライシメーター法で土壌面蒸発量を実測し,土壌面蒸発量の変動,関与する環境要因,土壌面蒸発量が蒸発散量に占める割合を明らかにすることで,その蒸発散への寄与を評価した.
観測地は滋賀県大津市桐生水文試験地(34°58’N, 136°00’E),年平均気温14.4 ± 0.4 ℃,年平均降水量1,696 ± 237 mm(2001~2020年)である.主な植生は65年生ヒノキ(Chamaecyparis obtusa Sieb. et Zucc.)で,樹冠は閉鎖している.林床にはヒサカキ(Eurya japonica Thunb.)が優占する.直径13.5 cmのポリプロピレン容器に底穴を開けて鉢底網を敷いた簡易ライシメーターを作製し,極力攪乱を避けた約10 cm高の土壌柱を詰め,周囲の土壌深と同じになるよう埋めた.測定点は計10地点である.約30分に一度,容器を含む土壌重量を電子天秤(X3202N, SHIMADZU)で測定し,直前の重量との差分から土壌面蒸発量相当の潜熱フラックス量を算出した.測定は2023/7/18,9/5,10/25,12/18の11~16時に3回ないし5回実施した.また,渦相関法による生態系スケールの潜熱および顕熱フラックスや,そのほか日射,気温,湿度,土壌体積含水率,降水量なども測定した.
土壌面蒸発量に相当する平均潜熱フラックスは各日18,15,13,12 W/m2だったが,日内や地点間でばらつきがあった.今後はこれらの実測値を踏まえ,多層モデル(Kosugi et al, 2006; Tsuruta et al, 2016; Jiao et al, 2022)による推定土壌面蒸発量の妥当性や,同試験地ヒノキ林の植生変化が蒸発散量に与える影響の有無を調べたい.


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