| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) G03-10  (Oral presentation)

「みどりの食料システム戦略」は肥料資源的に可能か?
Feasibly of "Stragety of Sustainable Food System" ~Assessment from fertilizer resources

*三島慎一郎((国開)農研機構)
*Shinichiro MISHIMA(NARO NIAES)

【はじめに】農林水産省の立ち上げた「みどりの食料システム戦略」には、2050年までに作付面積の25%を有機農業に切り替えるという野心的な数値目標が掲げられている。しかし、それに対応できる肥料資源が存在するかは言及されていない。本研究ではJAS有機において使用が許されている食品廃棄物堆肥について、国・都道府県単位で化学肥料を1:1で置き換える場合を想定して過不足を推計した。【材料と方法】国単位での化学肥料の需要量はポケット肥料要覧から、都道府県単位には農水省が行った全国規模の調査事業「土壌炭素貯留等土壌機能調査」から肥培管理に関する部分のアンケート個票から算出した。食品廃棄物発生量は環境省と農林水産省の公開している情報をもとに、窒素(N)・リン(P)・カリウム(K)に変換し人口で除して原単位化した。データは可能な限り2020年に統一した。【結果と考察】国単位で化学肥料は375GgN、131GgP、191GgKである。推計した都道府県での化学肥料施用量を積算するとNは15%過小評価、Pは8%過大評価、Kは13%過大評価であった。国内で発生する食品廃棄物を全量堆肥化すると159GgN、50GgP、105GgKであった。食品廃棄物堆肥は分解が早く化学肥料的に利用できることから、化学肥料と比すると、Nで42% 、Pで38% 、Kで55%に相当し国全体でJAS準拠の有機農業を25%以上に広げられるかもしれない。しかし、地域的に人口集中地では食品廃棄物が多く発生しするとしたため、東京では食品廃棄物堆肥のN量は化学肥料の44倍になり、他方北海道では6%にしかならない。有機農業の方法は定式化されたものではなく、非常に多様であり、肥料資源に関しても食品廃棄物の堆肥を使うのみではのみではない。しかし、何を使うにせよ肥料資源量と必要量を推計することなく実施することは、入会地の悲劇につながる。地域にある肥料資源量を把握した上で、持続性や土壌の健康から農業生産の構造を考える必要がある。


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