| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) H01-04 (Oral presentation)
異所的に分化した2集団が二次的に接触すると,交配前生殖隔離の急速な進化(強化)が起こる場合がある.そのような2集団間においては, 強化に関与したゲノム領域が選択を受けて分化するというパターンが想定される. しかし, 3集団が二次的接触した場合では, ある集団間で生じた強化を伴うゲノム分化のパターンと, 別の集団間でのゲノム分化のパターンは異なることも考えられる. また,強化がすでに進化している2集団に第三の集団が二次的に接触してきた場合,接触初期の遺伝子浸透によって生殖的隔離の程度が弱められることもあるだろう.このように,二次的接触した3集団間の強化とそれに伴うゲノム分化のパターンは,2集団間でよりも複雑になることが予想される.本研究では,スラウェシ島の古代湖(トウティ湖)で二次的接触により同所的に分布していると考えられている3種のメダカ(Oryzias marmoratus,O. profundicola,およびO. loxolepis)を材料に,3種間のゲノム分化のパターンを比較する。全ゲノム配列に基づく集団遺伝構造解析の結果,3種は明瞭に区別されることがわかり,3種の間には強い交配前隔離が成立していることが示唆された.また,集団動態履歴推定の結果,O. marmoratusの分岐が最も古く,その他2種と二次的接触したことが示され,ゲノム上に浸透の痕跡も見られた.講演では,3種間のゲノム分化のパターンを紹介し,二次的接触した3集団における強化の進化とゲノム分化との関係について議論する.