| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) H01-05  (Oral presentation)

二次的接触前の分布拡大は雑種強勢を促進する【B】
Population range expansion before secondary contact promotes heterosis【B】

*山口諒(北海道大学)
*Ryo YAMAGUCHI(Hokkaido Univ.)

生殖隔離が不完全な近縁種の分布が互いに接する地域では、交雑が観察されることが多い。交雑帯は、個体群動態・環境適応・同類交配といった多くの要素から構成されるため、古くから“自然の実験室”として着目されてきた。一方で、仮にこれから二次的接触が始まる集団のペアがいた時に、私たちはその進化・生態的帰結を予測することは可能だろうか?近縁種のペアが遺伝的にどれだけ分化しているか、どの生殖隔離機構が進化しているか、移動分散能力はどうか、などたくさんの要因が同時に寄与するため、交雑帯のシナリオは多岐にわたる。本研究では数理モデルを用いて、親集団が過去にどのような個体群ダイナミクスを経てきたかを調べることが、交雑帯の進化生態学的な帰結の予測に重要であることを紹介する。具体的には、二次的接触前の集団拡大時期において、分布の端の個体群が小さな集団サイズを経験する場合を想定する。そのような先端の集団では遺伝的浮動の効果が強く、中立あるいは弱有害な突然変異を確率的に蓄積して集団の平均適応度が低下してしまうことがある。その後の交雑では、相手集団から異なる対立遺伝子がもたらされることで、雑種強勢が起き、交雑帯の形成が親集団の適応度回復に寄与する。これは、生殖隔離の強度の低下と遺伝子流動のさらなる促進にもつながる。本発表を通して、親集団の経てきたプロセスが、交雑帯のシナリオに大きな違いをもたらす可能性について議論したい。


日本生態学会