| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(口頭発表) H01-06 (Oral presentation)
日本国内のチャバネアオカメムシは腸内に多様な共生細菌を抱えている(Hosokawa et al. 2016)。本州の共生細菌は系統Aであるのに対して、南西諸島では系統Bが高頻度で見つかるものの、共生細菌系統C~Fも少なからずの頻度で検出されている。このような多様な系統はどのように共存しているのだろうか。
今回の発表では、数理的な解析のために、1宿主-2共生者系が2つのパッチに分かれ両パッチを移住するシンプルな生態系で、宿主1種H-共生者2種P, QのSIRモデルを考えた。そしてパッチ間の非同調動態がどのように多様性維持に影響を及ぼすかを調べた。宿主の状態は共生者の感染を受けて次のように推移する。共生者に感染されていない宿主H、共生者Pに感染された宿主HP、共生者Qに感染された宿主HQ、そして共生者PとQが二重感染した宿主HPQ である。この1宿主-2共生者系が、2つのパッチを移住率(m, mP , mQ) で移住する。 宿主-共生者の相互作用では、感染率と脱落率の2つのパラメータを設けた。水平感染率は共生者が宿主に侵入する率、脱落率は垂直感染時に宿主から共生者が脱落する率である。共生細菌の宿主への侵入は、宿主から一度環境中に出た共生細菌が別の宿主個体に取り込まれると考えられ、これはそれなりの頻度で生じていると予想できる。宿主への共生細菌PとQの二重感染も生じるが、これは安定ではなく、実験条件下では片方が脱落する率は高い。しかし、自然界で少数ながらも二重感染個体が見つかり、野外で共生細菌1種を持った宿主に2種目の細菌が入り込む頻度はそれなりに高い。上記の宿主の状態推移ダイアグラムに従って、数理モデルの定式化を構築した。Hastings (2001) 等は2つのパッチからなる被食-捕食系での共存を示した。我々も連立常微分方程式のSIR系でR言語のdeSolve() のode()関数を利用し、2パッチからなる宿主1種-共生者2種系の数理解析で非同期による共存条件を解明する。