| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) H02-03  (Oral presentation)

樹木と魚類の成長にともなう個体呼吸シフトの統一性【B】
Generality of ontogenetic change in individual respiration of trees and fishes【B】

*森茂太(山形大学), 黒澤陽子(山形大学), 八木光晴(長崎大学)
*Shigeta MORI(Yamagata Univ.), Yoko KUROSA(Yamagata Univ.), Mitsuharu YAGI(Nagasaki Univ.)

魚類も樹木個体も呼吸により作られるエネルギーを利用し成長・繁殖・適応する。魚類や樹木を含む生物の個体呼吸と個体重量の関係は収斂し、個体重量の3/4乗倍に比例する(Max Kleiber法則)とされるが、疑問視する意見も多い。しかし、ロシア~インドネシアの多様な樹木の個体呼吸を「根を含む芽生え~大木」約1300個体で正確に実測した結果、個体呼吸と生重量の関係は種を超えて収斂し、傾き1以上と約3/4の2本の漸近線をもつ上に凸型の混合累乗式でモデルされた(Mori et al. PNAS, 2010; Kurosawa et al. Ann. Bot., 2023). 一方、ふ化直後の仔魚~幼魚(トラフグ、ヒラメ)の個体呼吸と重量も、樹木と類似の混合累乗式でモデル化された(Yagi et al. Proc. Royal Soc. B, 2010; Yagi et al. Sci. Rep. 2014)。このように魚類/樹木ともに明確に傾きが変化し、2つのステージが認められた。【1.呼吸急増ステージ】エネルギーを親から継承した種子・卵の発芽・孵化直後の成長初期は本葉・消化器系が未完成で光合成・摂食はできず、重量増加が小さく呼吸だけが急増する。【2.重量増加ステージ】その後、本葉・消化器系が完成すると光合成・摂食の開始により重量が増加し、呼吸増加は緩やかとなる。興味深いことに、両者ともステージ2の初期に死亡率が高まる(ダンピングオフ/初期消耗)。また、ステージ2ではエネルギーは節約・貯蔵され成長や呼吸が柔軟に変化し、この変化に応じて死亡率が制御された。水界と陸域の異なる栄養段階の生物でも個体呼吸スケーリングは類似し、ともに個体群動態に関与した。この結果は、混合累乗式の個体呼吸スケーリングが多様な生物の適応や進化を広く制御することを示しているのかもしれない。


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