| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) H02-04  (Oral presentation)

生物地理学的レガシーは鳥類の渡り経路の種差を説明する【B】
The legacy of biogeographic history explains the interspecific variation of avian migratory routes【B】

*青木大輔(森林総研, 北海道大学, 長野アカモズ保全研), 松宮裕秋(長野アカモズ保全研), 赤松あかり(北海道大学, 長野アカモズ保全研), 原星一(長野アカモズ保全研), 古巻翔平(北海道大学, 長野アカモズ保全研), 髙木昌興(北海道大学)
*Daisuke AOKI(FFPRI, Hokkaido Univ., N. Brown shrike Conserv Gr.), Hiroaki MATSUMIYA(N. Brown shrike Conserv Gr.), Akari AKAMATSU(Hokkaido Univ., N. Brown shrike Conserv Gr.), Seiichi HARA(N. Brown shrike Conserv Gr.), Shohei FURUMAKI(Hokkaido Univ., N. Brown shrike Conserv Gr.), Masaoki TAKAGI(Hokkaido Univ.)

るマクロ進化学では、適応に加え、系統進化の過程で生じる歴史的制約を考慮し、それぞれの相対的重要性を解明する。しかし、これまでの渡り経路の研究では、適応のみが検証され、歴史的制約の重要性は未解明であった。「渡り経路は種ごとの歴史的な分布域変遷を辿る」という仮説が古くから知られている。適応だけでなく、歴史的な分布変遷がもたらす制約を考慮することで現在の渡り経路の種差を説明できれば、渡り経路の多様化における歴史的制約の重要性を解明できる。そこで本研究では日本列島の渡り鳥をモデルにこの予測の検証を実施した。先行研究が進められていた欧米と違い、日本の渡り鳥は多様な祖先の分布域から移住したことが分かっており、渡りに適した地域と歴史的分布域を分離することが可能である。アカモズ・ノビタキの草原性2種を日本の2集団において、バイオロギングによって移動追跡し、計40個体分の渡り経路を明らかにした。さらに、種分布モデルを用いて2種の歴史的分布域を大陸において推定した。数理シミュレーションによって、風や餌資源の空間分布に適応したシナリオと、これらに加えて制約を考慮したシナリオ、それぞれで渡り経路を予測し、実際の渡り経路と比較した。その結果、多くの場合、適応だけのシナリオよりも、制約を考慮したシナリオが種間の渡り経路の違いを説明できた。一方、選択圧が大きいと考えられるノビタキの春の渡りでは、適応のみを考慮したシナリオが実際の渡り経路をよく再現した。これらの結果は、異なる自然選択の強度に対応して、歴史的制約の重要度が変わりうることを示唆する。ゆえに、種ごとの分布変遷の歴史がもたらす進化的制約は、適応とならんで、渡り経路の多様性を生む原動力となりうると考えられた。


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