| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) H02-06  (Oral presentation)

ガムシ(Hydrophilus acuminatus)は水生昆虫のホットスポットの指標種か?【B】
Is the Giant Water Scavenger Beetle (Hydrophilus acuminatus) an indicator species for aquatic insect hotspots ?【B】

*山中基成(筑波大学), 疋田直之(水戸葵陵高等学校), 佐伯いく代(筑波大学)
*Motonari YAMANAKA(University of Tsukuba), Naoyuki HIKIDA(Mito Kiryo High School), Ikuyo SAEKI(University of Tsukuba)

水生昆虫は、多くの種が絶滅の危機に瀕しており、保全のためには、多様な水生昆虫が生息できるハビタットを維持・創出していくことが重要である。本研究では、水生昆虫が多く生息できる環境の指標種として、ガムシの有効性を検証した。ガムシは体長4cm程度の大型の水生昆虫であり、環境省のレッドリストでは準絶滅危惧種に指定されている。本種はレッドリスト種の中では比較的高頻度で発見されるため、他の絶滅危惧種に比べて生息環境や餌資源の幅が広く、それを保全することで、多様な種の好適環境を同時に保全できるのではないかと考えた。まず、ガムシの生息環境の特徴を明らかにするため、2021年から2023年にかけて、茨城県内の水田42地点を対象とし、掬い取り調査を実施した。調査では、各地点において、ガムシの個体数、環境タイプ(平地水田または谷津田)、pH、電気伝導度、溶存酸素量、水草の量、他の水生昆虫の個体数を記録した。一般化線形モデルによる解析の結果、ガムシの個体数は、平地水田よりも谷津田のほうが高い傾向を示し、水草が多い環境で増加すると予測された。他の絶滅危惧種の出現種数や、水生昆虫全体の個体数も、水草の多い谷津田で高くなる傾向がみられた。さらに、ガムシを除いたレッドリスト種の出現種数とガムシの有無との関係について調べたところ、ガムシが生息している地点は、有意に絶滅危惧種の種数も高いと推測された。次に、餌資源を調べるため、ガムシの糞のDNAメタバーコーディング解析を行った。その結果、動物性の餌としてミジンコやユスリカが、また植物性の餌として多様な水田雑草が検出された。このことは、本種が肉食性の種よりも栄養段階の低い餌資源も利用できることを示しており、動物性の餌資源の低下に対し比較的頑健であると考えられた。以上の結果から、ガムシは水生昆虫の豊かなハビタットの指標種として利用できることが示唆された。


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