| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) H02-07  (Oral presentation)

愛媛県のため池における絶滅危惧種マツカサガイ個体群の生息
Population of an endangered Japanese unionid in an agricultural reservoir

*畑啓生(愛媛大学 院 理工), 松本浩司(愛媛大学 附属高), 成松克史(愛媛県生物多様性セ), 黒田啓太(愛媛県生物多様性セ), 苅田恵未(愛媛大学 理), 原琢真(愛媛大学 理), 東垣大祐(愛媛大学 院 理工)
*Hiroki HATA(GSSE, Ehime Univ.), Koji MATSUMOTO(High School, Ehime Univ.), Katsushi NARIMATSU(Biodiversity, Ehime Pref.), Keita KURODA(Biodiversity, Ehime Pref.), Megumi KARITA(Fac. Sci., Ehime Univ.), Takuma HARA(Fac. Sci., Ehime Univ.), Daisuke TOGAKI(GSSE, Ehime Univ.)

イシガイ類(軟体動物門二枚貝綱イシガイ目イシガイ科)は世界中に生息する淡水性の二枚貝であり、日本国内では13属26種が生息する。愛媛県では、マツカサガイ広域分布種(Pronodularia cf. japanensis 1)が小河川や農業用水路に生息しているが、1990年頃と比べ分布域と生息密度を急速に減少させ、絶滅が危惧されている。県内各地で調査を行ったところ、今治市の大規模なため池の一つで、マツカサガイの生息が発見された。2022年秋の渇水時に、ため池全周にわたるよう14のベルトトランセクトを設置し、水際から堤防上部まで調査を行った。その結果、計96の1 × 1 mのコドラートから合計2059個体、最大密度145個体/m2のマツカサガイ個体群が発見された。これらのマツカサガイの殻長は平均 ± 標準偏差56.2 ± 4.0 mmの一山型で、卓越年級群の存在が推定されたが、最小15 mm程度の稚貝も採集されたため、再生産も生じていると考えられる。マツカサガイはこれまで流水環境を好むと考えられてきたが、本研究ではマツカサガイが生息するため池の発見に至った。環境DNAを用いてその他のため池の調査も実施したが、現在のところ大規模なマツカサガイの生息が確認できたのはこの一つのため池だけである。このため池は周辺から豊富な花崗岩由来の真砂土の供給があり、大規模で水面が広く貧酸素になりにくいことが好適な生息場所となっているのではないか。今後はこのため池での生息環境を保全し、かつこの大きな貝個体群を用いた水路や河川での積極的保全を行っていきたい。


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