| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) H03-01  (Oral presentation)

陸上風力発電と猛禽類の行動の関係性に関する考察
A study of the relationship between onshore wind power and raptor behaviour.

*森原百合(日本工営(株)), 松島一輝((株)ユーラスエナジー), 風戸一亮(日本工営(株)), 北村亘(東京都市大学)
*Yuri MORIHARA(Nippon Koei Co., Ltd.), Kazuki MATSUSHIMA(Eurus Energy Holdings Corp.), Kazuaki KAZATO(Nippon Koei Co., Ltd.), Wataru KITAMURA(Tokyo City University)

 2050のカーボンニュートラル達成を見据えた脱炭素化に向けて、再生可能エネルギーの導入、とりわけ我が国でポテンシャルの大きい風力発電への期待は大きい。一方で、風力発電設備は鳥類の衝突を引き起こす可能性があると考えられ、その影響の程度については、環境アセスメントの段階で衝突確率の予測を行い、事後調査においてモニタリングを行うことが通例となっているものの、それでも予測上の不確実性は大きい。そのため、各ウィンドファームでは、バードストライク対策として各種環境保全措置を実施しているが、これら環境保全措置の効果の検証結果や、風車周辺での鳥類、特に猛禽類の飛翔行動については、更なる知見を集積することで、実行性ある環境保全措置の在り方を確立することにつながると考えられる。

 そこで、本研究では、風車が鳥類、特に猛禽類に及ぼす影響について、2つの視点から整理した。1つ目は、2021年に日本鳥学会において発表した、環境保全措置として風車に貼りつけた目玉シールがノスリの風車近傍での飛翔に及ぼす効果について、事後調査結果をより蓄積した6ヶ年分のデータをもとに再検証した。また、2つ目は、イヌワシについて、風車近傍で飛翔が確認されたとき(接近時)と確認されていないとき(接近した日の日中における非接近時)に、6ヶ年分の風車の稼働状況及び気象状況を比較し、どのようなときにイヌワシが風車近傍を飛翔していたかを検証した。

 結果、目玉シールの貼り付け後は、貼り付け前に比べてノスリが風車を忌避して飛翔する傾向が示唆された。また、イヌワシが風車近傍を飛翔するときは、風車の稼働状況及び気象状況と何らかの関係性があることが示唆されているが、詳細については解析中である。なお、イヌワシについては、確認された時期が非繁殖期に集中しており、繁殖期の行動ではない点に留意が必要である。


日本生態学会