| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) H03-09  (Oral presentation)

靴から考える海洋マイクロプラスチックごみ問題
Ocean Microplastics from a Perspective of Shoes

*真辺爽風, 小林牧人, 清水安夫, 藤沼良典(国際基督教大学)
*Sayaka MANABE, Makito KOBAYASHI, Yasuo SHIMIZU, Ryosuke FUJINUMA(International Christian Univ.)

 近年、マイクロプラスチックによる環境汚染問題が注目されている。しかし、日常的に使用されている靴やタイヤなどが使用中に摩耗する放出物の動態は不明瞭なだけでなく、マイクロプラスチックの発生源としても十分に認識されていない。特に、現代の靴のほとんどが合成素材の靴底を使用している。従って日常生活における靴の使用による靴底の摩耗により、摩耗物が自然環境中に放出されれば、靴底を由来としたマイクロプラスチックとして環境中に長く留まることが懸念される。そこで、本研究の目的は、日常生活の歩行を中心とした靴の使用において、1)靴底から環境中にマイクロプラスチックとして放出される摩耗物の量、2)魚類による靴底由来のプラスチック摂取の有無を、実験により検討した。
 実験1では、実験者3名がウォーキングシューズ(3足、N=6)を履いて92.4 km歩行した。途中で複数回靴の乾燥重量を計測した。92.4 km の歩行後、1足の靴の乾燥重量が平均で4.3g減少した。この結果を厚生労働省のデータに掛け合わせると、1日に約5748 kgもの靴底の素材が、日本で放出されている可能性があると推定した。従って、概算で年間に約2099 tもの合成底の靴がマイクロプラスチックとして自然環境中に放出される可能性が示唆された。
 実験2では、靴底を0.5 mm - 2 mmの大きさに破砕し、餌と同様に水槽内のキンギョに与えて90分後に解剖した。その結果、36個体の実験群のうち、28個体が靴底のチップを経口により摂取した。12個体の対照群の消化管にはチップは検出されなかった。よって、野生魚類が靴底由来のマイクロプラスチックを摂取する可能性が示唆された。使用したキンギョの体重は、30.6 ± 5.9 g (mean ± SD)である。
 上記の結果から、靴底由来のマイクロプラスチックが他の発生源由来のマイクロプラスチックと同様に自然環境に負荷をかける可能性が示唆された。


日本生態学会