| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(口頭発表) H03-10  (Oral presentation)

地球環境問題を形成する複数スケール・複数課題の同時解決のための新たな概念モデル【発表取消/Cancelled】
A new conceptual model toward simultaneous solution of the multiple global environmental issues at multiple scales【発表取消/Cancelled】

*石井励一郎(総合地球環境学研究所)
*Reiichiro ISHII(RIHN)

現在、地球温暖化や生物多様性劣化など個別の地球環境問題の直接の原因はすでにほぼ解明している。しかし、これまでその解決法を探る際には、個別の環境問題、特定の地域が切り取られ、それらが繋がる他の問題や地域の相互作用は十分に考慮されてこなかった。そのため、例えば全球のCO2のネットの排出量削減のために、植林やバイオエネルギー作物の面積を急増させる策をとれば、その地域の生物多様性と生態系の劣化が起こり、当該地域の人の暮らしに大きな影響が出る、というように、ある問題や地域の対象の「外側」に「しわ寄せ」を押し付ける解決策が個別に提案されてきた。地域の個別環境問題の解決案が、別の問題や地域との間に相互矛盾とコンフリクトを引き起こし、対策が行き詰まるため、全球での包括的な地球環境問題の解決を阻む大きな原因となっているが、IPCCやIPBESで用いられる気候変動予測や生物多様性変動予測に用いるモデルは現在もなお、単独問題、単独空間スケールの視点から構築されるため解決策は導けない。そこで、複数の地球環境問題と空間スケール(Multi-Issue Multi-Scale:以下 MIMS)とを相互に連結し、全球と国にまたがる人間活動と自然環境の間の相互作用網を、数理モデルをもとに統合モデルとして構築し、入手可能データを用いた数値実験から、その妥当性と、あらたに開発するボトムアップ指標と既存のトップダウン指標の整合性評価により、複数の地球環境問題を同時解決する道を探し出すための定性的な条件を探ること、またその上で地域の多様性と主体性を尊重したボトムアップの方策作成のための新たなスキームを構築することが必要である。
本発表では、この研究の基礎となるMIMSモデルのスキームと、将来の定量化に向けた現段階で収集できた各地域の生態系、人間活動に関するデータベース、地域の生態系・人間活動の健全性と地球全体での持続性を両立する上で不可欠となる指標のありかたなど、今後の計画を示す。


日本生態学会