| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-003 (Poster presentation)
農作物の生産において農業害虫管理は欠かせない。中でもアブラムシは吸汁やウイルス媒介などの被害をもたらす。そのため、農薬を用いた化学的防除がおこなわれてきたが、薬剤抵抗性の獲得による防除効果低減や非標的生物に悪影響を与えるという問題点がある。そのためアブラムシの天敵であるテントウムシ(捕食者)やアブラバチ(寄生者)を用いた生物的防除が注目されている。現状、これら2種の併用は、捕食者が寄生されたアブラムシ(宿主)も捕食し得ることから推奨されておらず、いずれか1種を用いた防除が主流である。しかし、両種の併用はコスト削減など様々な利点につながる可能性がある。そこで,捕食者が宿主を捕食しない条件を解明できれば、併用の際に生じる防除効果低減の回避につながると考え、演者らはこれまでに、未寄生のアブラムシ(健全個体)と宿主に対する、ナミテントウの捕食選択試験を行った。その結果、宿主が変色すると、ナミテントウは健全個体を選択的に捕食した。これはアブラバチを導入後、宿主が変色したタイミングで捕食者を導入することで併用できる可能性が示唆された。しかし、この試験は各生物を1個体ずつ対峙させて行われため、アブラムシのコロニー形成などを考慮できていない。そのため、実環境に外装するには不十分の知見と考えられる。そこで本発表では、小型容器内に投入した植物にアブラムシとその捕食者、寄生者の3者が相互作用する実験系をつくり、両天敵を併用した際の防除効果と、植物の健全度を調査した。植物の健全度の指標となるSPAD値は、アブラムシ・天敵生物の有無に関わらず差がなかった。しかし、光合成速度に影響を与える植物の含水量は天敵生物の導入した場合に多くなることがわかった。しかし、両種の併用と単種での利用で大きな差が見られなかったため、各生物の個体数の評価や導入個体数を見直すなどして共存の可能性を模索していく予定である。