| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-006  (Poster presentation)

合唱を聞き分ける:深層学習を用いたセミ類の鳴き声モニタリングと時系列解析【A】【O】
Discerning Choruses: Monitoring Cicada Calls Using Deep Learning for Temporal Analysis【A】【O】

*岡本遼太郎(筑波大学, 国立環境研究所), 小熊宏之(国立環境研究所), 西廣淳(国立環境研究所)
*Ryotaro OKAMOTO(Univ. of Tsukuba, NIES), Hiroyuki OGUMA(NIES), Jun NISHIHIRO(NIES)

自動録音装置や機械学習に基づく音声認識技術の進歩によって、音響を介した生態系観測は重要性を増しつつある。しかし、既存の研究は主に鳥類の鳴き声に焦点が当てられており、昆虫の鳴き声については研究事例が不足している。この一因には、昆虫の合唱から個々の種を認識することの難しさがあると考えられる。
多様な種が高い個体密度で合唱を行う昆虫の鳴き声の自動認識には、種の組み合わせ等の合唱パターンに対応したラベル付き教師データが必要となり、多大なコストがかかる。
本研究では、茨城県で観察されるセミ類5種の合唱を題材に、音声合成技術を利用したデータオーギュメンテーション手法を開発し、この問題の解決を試みた。開発手法では、音響シミュレーションソフトを用いて、個々のセミの鳴き声と背景音を組み合わせて様々な条件の合唱を再現し、各セミ種の有無を判別する深層学習モデルの訓練を行う。
提案手法により、極めて少ない教師データ(1種あたり10音源程度)から、実際に録音されたセミ類の合唱に対応可能な音声認識モデルを作成することができた。
この手法はセミ類だけでなく、他の昆虫の発声にも適用可能であり、昆虫の自動音響観測のコストを大幅に削減できる可能性がある。さらに発表では、約3ヶ月間の常時録音データを用いて推定した、鳴き声を介したセミ類の種間相互作用についても報告する。


日本生態学会