| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-011 (Poster presentation)
肉食動物にとって、どのようなサイズの獲物をとるかはエネルギー獲得の効率性において重要である。捕食を行う際、より大きな獲物を捕食することは、短時間でより多くのエネルギーを獲得でき、危険の伴う索餌行動の回数を減らせるといったメリットがある。しかし、大きな獲物を食うことには、デメリットもあるかもしれない。大きい獲物は、その大きさゆえに処理が難しく、捕食に対する抵抗が大きいと考えられ、それにより、捕食行動を行なっている捕食者の行動が制限されたり、意図しない動きが引き起こされる可能性がある。このような行動制御が、より上位の捕食者の注意を引き、捕食を誘発し、捕食者の生存を脅かす可能性もあるのではないだろうか。我々は、獲物を丸呑みする捕食形態を取るエゾサンショウウオ幼生を対象として、これらの予測を実験的に検証した。エゾサンショウウオ幼生の主な捕食対象である同種幼生やエゾアカガエルの幼生(以下オタマ)は、様々なサイズのある獲物である。予測の検証のために、2つの実験を行った。1つ目の実験では、獲物であるエゾサンショウウオ幼生およびオタマそれぞれで大型および小型の個体を用意し、それぞれを捕食した際および何も捕食していない時のエゾサンショウウオ幼生の行動を比較した。結果、大型の獲物を食べたエゾサンショウウオ幼生は、捕食中に回転や首振りといった、通常状態では見られない異常行動が見られた。2つ目の実験では、オオルリボシヤンマの幼虫(以下ヤゴ)のいる水槽内で、エゾサンショウウオ幼生に大型、小型の同種を捕食させ、ヤゴからの捕食の受けやすさを比較した。結果、大型の同種を食べた時の方が捕食されやすいこと、被食は異常行動が生じた時により起こることが確認された。これらの結果は、大型の獲物の捕食は、捕食者に異常行動を生じさせ、被食リスクを上げる可能性があることを示している。