| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-013  (Poster presentation)

温暖化に伴う体サイズ縮小とその逆展開【A】【O】
Decreases in beetle body size with global warming and and its recent reversal trend【A】【O】

*古澤惇平(北海道大学), 丹羽慈(自然環境研究センター), 日浦勉(東京大学), 内海俊介(北海道大学)
*Jumpei FURUSAWA(Hokkaido Univ.), Shigeru NIWA(Japan Wildlife Research Center), Tsutom HIURA(The University of Tokyo), Shunsuke UTSUMI(Hokkaido Univ.)

気候変動に伴う温暖化の進行による生物の絶滅リスク上昇が懸念されている。この懸念に対処すべく、温暖化に対する生物応答の研究が蓄積されてきた。温暖化に対する普遍性の高い生物応答として、分布シフトやフェノロジー変化の二つが専ら注目されてきたが、近年、第三の応答として、体サイズ変化(特に、体サイズ減少)が指摘されている。体サイズは、繁殖や資源獲得などに関与する根本的な機能形質であるため、応答パターンやそのメカニズムを明らかにし将来予測することは、生物の絶滅リスクの予測に対しても重要である。温暖化進行下の野外における体サイズ変化を調べた先行研究では、種や分類群を跨いだ群集レベルの応答に焦点が当てられてきた。そのため、先行研究で種内変異は考慮されておらず、体サイズ変化が可塑的応答なのかあるいは進化的応答なのかといった根本的メカニズムの解明に繋がる知見は乏しい。また、これまで体サイズ変化は、気温上昇下での線形的な変化が仮定されてきた。しかし、可塑的応答と進化的応答の交絡によって体サイズの時間変化は非線形的である可能性があるが、これが見過ごされている。以上を踏まえると、体サイズ応答メカニズムの解明と適切な将来予測を目指すための第一歩として、まずは種内レベルでの体サイズ応答パターンの時空間動態を明らかにする必要がある。そこで本研究では、日本各地で過去20年にわたって標本が収集されてきたクロツヤヒラタゴミムシに着目し、体サイズの時空間動態を解明することを目的とした。特に、1)線形的な体サイズ減少傾向はみられるのか、2)局所集団間で体サイズ動態は異なるのか、を明らかにする。本発表では、北海道から和歌山にかけた5地点の結果について報告する。温度上昇に対して線形的な体サイズ減少は示さなかったが、類似した傾向を示す地点が複数あった。さらに体サイズ動態に影響しうる気候要因との関連性とあわせて議論する。


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