| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-023 (Poster presentation)
外来種による生態系への影響として、類似した生態的地位を占める在来種との競争が挙げられ、競争的排除は近縁種間で起こりやすい。佐渡島に生息する食肉目4種のうち、イタチ科のニホンテン(以下、テン)とニホンイタチ(以下、イタチ)は最も近縁な関係にある。テンは1959年に導入された国内外来種である。イタチは予備的な分子系統解析により、在来種の可能性が高いとされている。佐渡島での外来種テンの影響について、主に餌生物に対する影響は調査されてきたが、在来種とのニッチの重複可能性は考慮されてこなかった。そこで本研究では、①mtDNAを用いた分子系統解析によるイタチの由来の推定、および②外来種テンと在来種の可能性が高いイタチのニッチ(分布と餌資源)の重複度に基づく、佐渡島における両種の生態的関係の総合的な検討を行った。①分子系統解析の結果、イタチは大きく2つのクレードに分かれ、佐渡島の個体は本州グループの東日本グループに属し、その中でも祖先的な系統であった。このことから、佐渡島のイタチは在来種の可能性が高いと考えられる。②両種の分布と餌資源を明らかにするために、サンプリングが容易な糞を採取し、DNA分析により糞主を同定した。11ルート(総延長75.9 km)から採取した343個の糞のうち、331個がテン、10個がイタチに同定され、全てのルートでテンの糞密度が非常に高かった。糞と目撃地点の位置情報を用いたMaxEnt解析によれば、イタチは沿岸部、テンは傾斜の大きい環境においてそれぞれ生息確率が高かったため、分布の重複度は小さいと考えられる。食性に関しては、両種共に昆虫類を多く利用していたが、それ以外の餌項目についてテンは果実類、イタチは両生類等の動物質の利用が多かった。以上の結果から、現在の佐渡島では両種のニッチ分割は完了しており、テンが広いニッチを占有しつつも、イタチはテンの利用が少ない沿岸部を利用することで棲み分けしていると考えられた。