| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-026  (Poster presentation)

学習の連鎖が引き起こす水田生態系における間接効果【A】【O】
Indirect effects involving the chain of learning in the rice ecosystem【A】【O】

*上原春香, 遊佐陽一(奈良女子大学)
*Haruka UEHARA, Yoichi YUSA(Nara Women's Univ.)

捕食者が駆動するトップダウンの間接効果には、捕食による被食者の密度変化を伴う密度媒介型(DMIIs)と、行動や形態といった特性変化を伴う形質媒介型(TMIIs)の2種が存在する。これらの間接効果は、進化的時間スケールにおいて形成されてきた可能性もあるが、特に生物の侵入が繰り返される現代の生態系では、短期的な学習の関与も重要である可能性がある。
 南米原産の外来種であるスクミリンゴガイPomacea canaliculataは、イネOryza sativaの苗を食害する重要有害種である。ハシボソガラスCorvus coroneは本種を捕食することが最近判明したが、捕食の有無や捕食行動に地域差がみられることから、この捕食には学習が関与していることが示唆される。また、スクミリンゴガイは捕食者を学習し、捕食者の採餌様式に特異的な逃避反応を示す。したがって、カラスとスクミリンゴガイによる「学習の連鎖」は、水田生態系における間接効果を引き起こしている可能性がある。この仮説を検証するために、野外調査とメソコスム実験を行った。
 野外調査では、愛媛県松山市の複数の水田においてカラスによる捕食率を3段階(高、低、捕食なし)に分けて評価し、各水田においてカラスに対する貝の逃避反応である潜土をしている個体の割合を比較した。その結果、カラスによる捕食率が高いほど潜土個体の割合が高いことが分かった。
 メソコスム実験では、カラスによる捕食がある地域とない地域のスクミリンゴガイをそれぞれ別の実験水田に導入し、3段階の被食リスク(カラスの捕食を模した処理を毎日、4日おき、捕食なし)を施して貝の潜土行動とイネの残存本数を16日間記録した。その結果、採集した水田での捕食の有無と被食リスクの両方が貝の逃避反応に影響した。さらに、イネの食害は、捕食のない地域由来の貝の方が、捕食のある地域よりも大きかった。これらの結果は、「学習の連鎖」が水田生態系における形質媒介型の間接効果を引き起こすことを示唆している。


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