| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-030  (Poster presentation)

若松鉱山跡地における土壌小型節足動物の群集構造【A】
Community structure of soil micro arthropods at the Wakamatsu Mine site.【A】

*後藤法子, 藤巻玲路, 山下多聞(島根大学)
*Noriko GOTO, Reiji FUJIMAKI, Tamon YAMASHITA(Shimane Univ.)

重金属濃度の高い土壌に生息するトビムシ類やササラダニ亜目は汚染された微生物やリターなどを摂食するため、重金属を体内に取り込んでいる可能性がある。それらを捕食するトゲダニ亜目やケダニ亜目なども食物連鎖を介して重金属の影響を受け、その結果、土壌動物群集の構造が変化する可能性がある。本研究ではクロム鉱山跡地である鳥取県若松鉱山跡地を調査地とし、重金属の影響下にある土壌小型節足動物の群集構造について調査した。蛇紋岩地帯の森林内と坑道付近の2地点を調査地に設定し、2022年12月、2023年4月、7月、10月に100cm3の採土円筒を用いて土壌試料を採取した。土壌小型節足動物をツルグレン装置により抽出した後、土壌試料の重金属濃度、pH、および炭素・窒素濃度を測定した。
土壌のpHは5から7程度で、坑道付近では中性、森林内では弱酸性であった。炭素濃度は森林内でやや大きい傾向にあった。重金属濃度は、坑道付近においてCr、Fe、Cu、Zn、Pbが大きな値となった。一方、Mn、Niの濃度は坑道付近よりも森林内の方が大きな値となった。土壌小型節足動物の個体数は10月採取が最も多く、採土円筒あたりの平均個体数は坑道付近が61.0個体、森林内が23.4個体であった。土壌節足動物の個体数が森林内よりも坑道付近で大きくなる傾向は他の月も同様であった。また、森林内ではトビムシ目の占める割合が高かった一方、坑道付近ではササラダニおよびトゲダニの占める割合が増加する傾向にあった。これらの結果から、坑道付近では重金属耐性の大きいササラダニが増加し、それを捕食するトゲダニの個体数も増加したことが考えられる。


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