| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-032  (Poster presentation)

さとやまのくも【A】【O】
spiders in satoyama【A】【O】

*島内梨音(東京都立大学), 大澤剛士(東京都立大学), 馬場友希(農業環境技術研究所)
*Rion SHIMAUCHI(Tokyo Metropolitan University), Takeshi OSAWA(Tokyo Metropolitan University), Yuki G BABA(NIAES)

 里山とは,集落や農地,二次林,ため池や草原などから構成される複合生態系であり,それらが混在し,複数の景観がモザイク状に組み合わさっていることが特徴である.近年の耕作放棄地拡大に伴い,耕作放棄が地域の生物多様性にもたらす様々な影響が明らかになってきたが,耕作放棄地を里山の景観要素の1つとして捉え,里山の生態系全体に与える影響を評価した例は少ない.本研究では,耕作放棄が里山の生態系に与える影響を評価することを目的に,耕作放棄が発生している里山において,クモの種及び機能構成を複数時期にわたって調査した.農地を放棄水田,営農水田,営農畑の3タイプに分類し,調査時期,土地タイプ別の種数個体数および採餌に関わる機能を確認した.加えて,放棄水田と営農水田,営農畑の2つの組み合わせにおける調査時期間,土地タイプ間のクモの共通種を確認し,クモが耕作放棄地をいつ,どのように利用しているか検討した.その結果,クモの種数は3つの土地タイプの中で常に放棄水田が最も多く,個体数もほぼ同様の傾向がみられた.共通種の確認によって,複数種のクモが営農地から草刈り等の攪乱を避けて放棄地に移動していること,いくつかの種にとって放棄地は重要な繁殖場所になっていることが示唆された.機能の頻度は土地タイプ間で違いがみられなかったが,どの機能の種も放棄地と営農地の間を移動していることが示唆された.里山における景観要素としての耕作放棄地は,里山景観全体のクモ種数,個体数を底上げし,全体としての種多様性と機能的冗長性,安定性に貢献していると考えられた.


日本生態学会