| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-034 (Poster presentation)
群集集合は、決定論的なニッチによるプロセスと確率論的な中立プロセスで成立しており、ニッチによるプロセスがより重要であるとされる。ニッチは、空間や時間などの生物間で奪い合うことのない「条件ニッチ」と、餌資源などの生物間で奪い合うことがある「資源ニッチ」に大別される。しかし、各ニッチが群集レベルでどれほど関与しているかは明らかになっていない。そこで、「各ニッチが樹洞内水生無脊椎動物群集に与える影響を解明すること」を目的とし、モデルシステムである樹洞内水生無脊椎動物群集を対象とした調査を行った。
資源ニッチと条件ニッチを操作した処理区間で群集組成を比較する野外実験を行った。資源ニッチは餌(コットン粉末)を、条件ニッチはシェルター(プラスチック製の葉)を付加することによって操作した。つまり、対照区、資源ニッチ区、条件ニッチ区、資源ニッチ+条件ニッチ区の4種類の人工樹洞(樹洞に見立てた容器)を作成し、各10セットずつ森林内の樹幹に設置した。3か月後、内部に生息していた全生物を回収し、出現したすべての無脊椎動物種の個体数と体長を記録した。
調査の結果、全ての処理区において貧栄養な環境に生息する種が優占し、群集組成は有意に分かれなかった。このことから、貧栄養な生態系という環境フィルタリングによる効果がニッチ分化による効果よりも大きかったと考えられる。また、体サイズに着目した場合、種によって処理区に対する反応が異なっていたことから、ニッチが異なる種が同一群集内で共存していることが示唆された。