| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-037 (Poster presentation)
日本の森林面積の約4割は人工林で構成されており,天然林の消失にともなう人工林の増加は生物多様性を著しく低下させることが報告されている.森林土壌中において最も普遍的に存在するトビムシにおいても,天然林の人工林化によって個体数や種数,群集構造が変化することが報告されているが,これまでの研究では土壌層に注目していることがほとんどで,森林内の他の資源を利用するトビムシ群集への影響を調べた事例はほとんどない.そこで本研究では,森林内に普遍的かつ安定的に存在する資源である落枝を利用するトビムシに着目し,森林タイプの変化による影響を受けやすいのは従来注目されてきた土壌層と落枝,どちらのトビムシ群集なのかを検証した.調査は2022年の10月と11月に奈良県奈良市の近畿大学農学部内の落葉広葉樹林およびスギ林,ヒノキ林(各3林分)で行った.落枝は腐朽段階後期で直径3±1 cmのものを選択し,100 cm3のサイズで各地点5回ずつ採取した.土壌層は地表から5 cmまでの土壌(25 cm2×5 cm)を各地点5回ずつ採取した.採取したサンプルからツルグレン装置を用いてトビムシを抽出し,種レベルで同定・計数を行った.調査の結果,土壌層のトビムシは森林タイプ間で個体数や種数にほとんど違いがなかったのに対し,落枝では表層性種の個体数,種数が人工林で有意に少なかった.さらに,落枝を利用する表層性種の中で特に影響を受けていたのは落枝に特異的な分類群であり,落枝を利用するトビムシ群集の特異性は森林タイプの変化によって喪失することが明らかとなった.