| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-038 (Poster presentation)
伊豆諸島の八丈小島はイタチ,ノネコ,ヘビ等の鳥類の有力な捕食者がもともと存在せず, 未だ導入もされていない貴重な島嶼生態系である.また近年,ノヤギ駆除事業後,クロアシアホウドリの新たな繁殖地になるなど,その保全上の重要性が着目されている.しかし,アクセスの困難な無人島であり包括的な調査は不足している.そこで本研究では,音声ロガーを用い八丈小島における鳥類の生息状況を把握し,さらに,有人島であり,ノネコ,ニホンイタチ,アオダイショウ等の外来捕食者の生息する八丈島本島と陸鳥群集について比較することを目的とした.2023年3月下旬から5月下旬にかけて,八丈小島の17地点及び本島10地点(いずれも森林)に自動録音機器Song Meter Micro(以下ロガー)を設置し,0-23時の毎時最初の5分間の鳥の音声を自動で録音した。回収したロガーの録音記録から鳥類種と各日各地点の音声数を集計した.八丈小島と本島との比較については,高木林で得たデータのみを用いた.解析の結果,八丈小島ではアカコッコ,カラスバト,カンムリウミスズメ等の絶滅危惧種10種含む26種の鳥類が確認された.カンムリウミスズメは八丈小島においてはこれまで繁殖例が確認されておらず、同種の貴重な営巣地となる可能性が示唆された.高木林で記録された音声数を島間で比較すると,アカコッコやカラスバト等の陸鳥は八丈小島で顕著に多かった.一方,シジュウカラ等は本島で多い結果となった。小島に多く確認された鳥類は地上営巣・地上採食といった生活様式を持つ傾向が見られ,イタチ等の地上性捕食者がいないことが強く影響していることが示唆された.本研究により,八丈小島はアカコッコなどの固有性の高い希少鳥類が高密度で生息すること、希少な鳥類の新たな繁殖地となる可能性があることから,その保全上の重要性が示された.今後も基礎調査を実施するとともに,貴重な八丈小島の生態系の保全対策を検討する必要がある.