| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-040  (Poster presentation)

温暖化と殺虫剤の複合影響による上位捕食者の減少を介した生物群集と水質の反応【A】【O】
Response of biological communities and water quality to the combined effects of warming and pesticides via reduction of top predators【A】【O】

*石若直人(近畿大・院・農), 平岩将良(近畿大・農), 橋本洸哉(弘前大・農生), 土屋健司(国立環境研究所), 角谷拓(国立環境研究所), 早坂大亮(近畿大・農)
*Naoto ISHIWAKA(Grad School of Kindai Univ.), Masayoshi M HIRAIWA(Kindai Univ.), Koya HASHIMOTO(Hirosaki Univ.), Kenji TSUCHIYA(NIES), Taku KADOYA(NIES), Daisuke HAYASAKA(Kindai Univ.)

殺虫剤は水域生態系に大きな影響を与える。さらに、温暖化と複合的に作用することで、その影響が強化される可能性がある。実際、演者らはこれまでに、水田を模した実験生態系のなかで水温上昇と殺虫剤の有無を操作した2×2要因実験を行い、水温上昇下において殺虫剤がトンボ類に与える影響が相乗的に強まることを示した。また、群集解析を行うと、複合影響がトンボ類以外の生物(とくに餌生物となりうる生物)の密度や種数に影響することで群集組成を変化させ、さらには水質を変化させることも分かった。これらの既存研究の結果は、殺虫剤と温暖化が水域の生物群集や水質に与える複合影響メカニズムとして、上位捕食者の減少を介したトップダウン効果(TD)の関与を示唆する。一方で、殺虫剤やその代謝物そのものが栄養として生産者系に正の効果を及ぼし、逆にボトムアップ効果(BU)を引き起こした可能性も否定できない。そこで、本研究では殺虫剤と温度上昇の複合影響メカニズムとして、TDがどの程度関与するのかを操作実験から検証することを目的とした。小型水槽に組成を均一にした水域生態系を創出し、殺虫剤・水温上昇・捕食者導入(ヤゴ)の有無を操作した2×2×2の要因実験(各8反復)を行った。その結果、ヤゴ導入区では捕食圧とみられるマキガイの減少傾向がみられた。一方、殺虫剤処理ではマキガイが増加傾向にあったが、この現象はヤゴ導入の有無を問わず見られた。また、水質への影響として、殺虫剤処理では溶存酸素量が高く、生産者の一次生産が高まった可能性が示された。また、これら一連の傾向は水温上昇下ほど顕在化した。つまり、水域生態系に対する温暖化と殺虫剤の複合影響メカニズムとして、殺虫剤がヤゴを減少させることによるTD的な経路だけではなく、実は殺虫剤自体がマキガイや生産者に正の効果をもたらすBU的な経路も多いに関与し、生物群集と水質に影響を与える可能性が示唆された。


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