| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-041 (Poster presentation)
近年の淡水生態系における大幅な劣化の要因として、乱獲・水質汚染・外来種・生息地の劣化・流れの変化が指摘されている。これらのうち生息地の劣化の大きな要因である河川改修、その中でも河水と直接接する低水護岸が魚類の生息に及ぼす影響は広く調べられており、コンクリート護岸は水際部の緩流域を消失させ遊泳魚に負の影響を及ぼすことが知られている。一方で、こうした先行研究の多くは局所スケールにおいて護岸の有無から魚類への影響について評価したものが大半であり、広域スケールにおいて護岸の多寡から魚類への影響を評価した事例は極めて乏しい。生態系は局所スケールの累積のみでは広域スケールにおける事象を理解できないとする指摘があり、広域スケールにおける護岸の影響を評価する必要性があるといえる。以上より、本研究では広域スケールにおいて低水護岸の多寡が魚類の生息に与える影響を評価することを目的とした。
河川水辺の国勢調査による魚類の採捕データ及び河川便覧1992に記載の一級水系の低水護岸延長を用い、各生活様式及び各選好底質等の魚類の在不在に水系の低水護岸整備率が与える影響についてGLMMにより評価した。
遊泳魚は低水護岸整備率と有意な関連が認められなかったが、底生魚のうち砂礫底選好魚類は低水護岸整備率と有意な負の関連が認められた。この要因として、遊泳魚は底生魚と比較して移動分散範囲が広いことから好適な生息地を求め積極的に移動を行うため、広域スケールにおいては護岸の多寡による影響を受けにくいことが推測される。また、治水を目的とする護岸工事では護岸の水衝部に根固めを施し洗堀を防止、また河道が直線化され水衝部が消失することから連続する瀬-淵構造が失われ、砂礫底選好魚類の生息場が劣化したことが推測される。
本研究により、広域スケールにおいて低水護岸の多寡は魚類のタイプ別に様々な影響を及ぼしていることが示された。