| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-044  (Poster presentation)

三峰川水系の異なる立地環境における植生とカワラバッタの環境選好性【A】
Vegetation and environmental preferences of Eusphingonotus japonicus in different habitats of the Mibu River system【A】

*廣岡亮, 大窪久美子(信州大学)
*Ryo HIROOKA, Kumiko OKUBO(Shinshu Univ.)

カワラバッタEusphingonotus japonicusは、砂礫河原をハビタットとする日本固有のバッタ類である。近年、砂礫河原の減少により全国的に個体数を減少させている種の一つである。本種は長野県RDLに記載されていないが、天竜川および三峰川水系で行われた先行研究(山岸・大窪 2013、奥村・大窪 2016、山田・大窪 2017)では個体群の大きい生息地は少なく、環境の変化に伴う生息地の減少や個体数の減少が懸念されている。そこで本研究ではバッタ類群集と植生、立地環境条件について把握し、カワラバッタの環境選好性について考察し、本種の保全策を提案した。三峰川水系の河川敷6箇所(A~F)を調査地とし、コドラート10個からなるラインを2本(i, ii)設置した。また、各コドラート内にはサブコドラートを設置した。コドラート内ではバッタ類群集調査、サブコドラート内では植生調査と立地環境条件調査を行った。全体で8科21種730個体のバッタ類が出現し、カワラバッタは調査地Aを除く全ての調査地で出現した。また予備調査ではAでも本種は確認された。植生調査では47科94種の植物が出現した。その中には先行研究(奥村・大窪 2016)において本種が餌資源として選好する可能性が示されているキク科の在来河川固有植物が含まれた。調査地Aでは他の調査地に比べ植被率が高かった。キク科在来河川固有植物の優占度と相対光量子束密度は有意な正の相関(Spearmanの順位相関係数:p<0.001)、本種の個体数と植被率は有意な負の相関があった(同:p<0.001)。以上より、本種は植被率の低い環境を選好すること、キク科の在来河川固有植物は植被率、植物高の低い環境を選好すると考察された。本種の保全には植被率や植物高の低い環境の維持・管理が重要であると示唆された。


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