| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-045 (Poster presentation)
野外で池を観察すると,水鳥(主にカモ類)の個体数がかなり多い池と,全くいない池がある.先行研究でも,一部のカモ類が特定の池に集中する傾向があることが指摘されているが,実際に種ごとの集中度や人気の変動を定量化した例は少ない.本研究では,都市の池において,水鳥が一部の池に集中する現象の解明を目指す.都内の池22箇所を対象に,水鳥に集中傾向があるか調べ,その集中度や,池選択の年変動について定量化を試みた.その結果,集中度と池選択の年変動は,種によって異なることがわかった.ヒドリガモはとても集中度が高く,毎年同じ池に集中する傾向が見られた.ほかの種では,とても均一に分布し年変動が小さなカルガモから,中程度の集中度で年変動が大きなホシハジロまでの傾度があった.水鳥の分布モデルを構築する際や,管理計画の策定時には,こういった種ごとの分布特性を考慮することが望ましいと考えられる.また,それらの分布特性と,水鳥の環境選好性や他個体選好性,種の生態的特性との関係を回帰モデルで調べることで,水鳥が池に集中する要因を明らかにすることを試みた.ひとつは個体どうしを独立と考え池面積を収容力とし,環境として池周辺の森林割合を考慮したモデルである.もうひとつは各個体が池を選択する際に,環境として森林割合と池面積,存在する他個体(同種と他種どちらも含む)を考慮すると仮定したモデルである.後者のモデルで環境との関係を見ると,水域に特有の採餌をする種(潜水採餌するキンクロハジロとホシハジロ,水面採餌するハシビロガモ,逆立採食するオナガガモ)は,森林のない小さな池を好む傾向にあった.しかし池への集中度や年変動に関する分布特性と,環境選好性や他個体選好性,種の生態的特性との関係は明瞭ではなかった.今後は調査地を増やすとともに,同種個体や他種個体の誘引性なども含めた解析を行なう必要がある.