| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-046 (Poster presentation)
動物の分布を制限する主要因の一つとして餌資源があげられ、中でもスペシャリストの動物ではその影響が大きいと考えられる。このような例は植食性スペシャリストでは知られているものの、肉食性スペシャリストではその例の少なさから餌の動物の分布が捕食者の分布に与える影響の大きさはあまりわかっていない。そこで本研究では、オサムシ属において、幼虫期にミミズのスペシャリストであるオサムシ亜属とオオオサムシ亜属に着目した。日本のミミズは北海道と本州以南で優占する科が異なるため、餌のミミズがオサムシの分布に影響している場合、各科のミミズを利用した際にオサムシの種ごとに生育に違いが生じる可能性がある。そこで北海道および本州最北端の青森県に分布するミミズ食オサムシと各科のミミズを用いて飼育実験を行って比較した。
オサムシは、過去に北海道から本州に分布を拡大し、北海道全域と本州の一部の湿地に分布するアカガネオサムシ(オサムシ亜属)、過去に本州から北海道に分布を拡大し、北海道の東南部と本州に分布するクロオサムシ(オオオサムシ亜属)、本州のみに分布するホソアカガネオサムシ(オサムシ亜属)の3種を用いた。餌のミミズはフトミミズ科とツリミミズ科を用い、オサムシ種とミミズ種の組み合わせごとに幼虫の生存率などに違いが生じるか検証した。
その結果、アカガネオサムシは、ツリミミズ科利用時の幼虫の生存率が高く、フトミミズ科利用時の生存率が低かったが、逆にクロオサムシとホソアカガネオサムシは、フトミミズ科利用時の生存率が高く、ツリミミズ科利用時の生存率が低かった。ツリミミズ科を用いた場合は、アカガネオサムシ、クロオサムシ、ホソアカガネオサムシの順に生存率が低下する傾向がみられた。これらのことから北海道と本州のミミズの分布の違いによりミミズ食オサムシ各種の分布が制限されている可能性が示された。