| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-048  (Poster presentation)

中津干潟におけるヤドカリ2種の貝殻利用特性【A】
Shell utilization of two hermit crabs Pagurus minutus and Diogenes nitidimanus in Nakatsu tidal flat【A】

*押川芽以, 北西滋(大分大学)
*Mei OSHIKAWA, Shigeru KITANISHI(Oita Univ.)

ヤドカリにとって巻貝類の貝殻は,捕食者防御や成長率,抱卵数などに影響をもたらす重要な資源である。一般に,野外ではヤドカリが利用可能な貝殻は少なく,限られた貝殻資源を巡る闘争が生じている。一方で,ヤドカリは複数種が同所的に生息しており,その共存メカニズムの解明の一端として貝殻利用パターンが調べられてきた。
大分県北部に位置する中津干潟では,テナガツノヤドカリ(Diogenes nitidimanus)とユビナガホンヤドカリ(Pagurus minutus)がほぼ全域にかけて共存している。本研究では,これらヤドカリ2種の共存を可能にする要因を明らかにすることを目的とした。2023年7〜8月,干潟の潮間帯上部から下部にかけての3地点において,テナガツノヤドカリとユビナガホンヤドカリの体サイズや性比,貝殻サイズ適合度(SAI),貝殻利用パターンなどを調べた。SAIの計測には,各ヤドカリに空の貝殻を多量に与える貝殻選択実験より導出した理想サイズを用いた。
野外から採集された個体は,テナガツノヤドカリが128個体,ユビナガホンヤドカリが512個体であった。テナガツノヤドカリでは沖合で個体数が少なく,潮間帯上部に偏った分布がみられた。また,性比はユビナガホンヤドカリでは沖合ほどオスに偏っていた。さらに,体サイズ,SAIともに干潟内での偏りがみられた。貝殻利用パターンは種間,地点間ともに違いが見られ,貝殻選好性の種間変異が両種の共存メカニズムの一因となっていることが示唆された。


日本生態学会