| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨 ESJ71 Abstract |
一般講演(ポスター発表) P1-054 (Poster presentation)
伊那盆地は長野県南部に位置し、東西を赤石山脈と木曽山脈に挟まれた地域であり、中央に諏訪湖を源とする天竜川が流れる。天竜川沿いの低地には水田地域が広がり、同所的にツチガエルGulandirana rugosa、ナゴヤダルマガエルPelophylax porosus brevipodus、トノサマガエルPelophylax nigromaclatusが生息する。3種は環境省または長野県版のレッドリストに記載がある。伊那盆地における既往研究において3種の大まかな分布が示されたが、盆地全域の広域にわたって分布状況が調査された例はない。
そこで本研究では特に知見の少ないツチガエルを中心として、鳴き声とルッキングによる調査から3種の伊那盆地における基礎的な生態および分布状況を把握するとともに、地形および地理的な環境の選好性を明らかにすることで、より重点的に保全策を検討すべき地域を明らかにすることを目的とした。また、分布調査と同時期に同地点で行った環境調査から両者の関係性や調査手法による結果の違いについても比較・検討した。
2023年の夏期に毎月1回、夜間に伊那谷に広がる水田地帯119地点で3種の鳴き声による分布状況を調査した。本調査では鳴き声の多寡を4段階に分けた。ルッキング調査は鳴き声調査実施地域のうち12地域で各5筆を選定、全60筆で実施した。調査は夜間に畦を歩き、確認された3種の個体数を記録した。
ツチガエルは伊那盆地に広く分布している一方で、ナゴヤダルマガエルは北部、トノサマガエルは南部に偏って分布した。また、天竜川に対して垂直にみた断面を天竜川後背部、斜面部、西天用水受益地の3つに分割して多重比較検定を実施したところ、ツチガエルは斜面部を、ナゴヤダルマガエルは天竜川後背部および西天用水受益地で分布した。水田面積や異なる調査手法で結果を比較したところ、おおよそ同様の傾向が示された。