| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-057  (Poster presentation)

捕食者に応じたソウシチョウのモビング行動【A】【O】
Differences in the mobbing behavior of invasive Red-billed Leiothrix across its predators【A】【O】

*森藤泰紀(近大・院・農), 早坂大亮(近大・農)
*Hiroki MORIFUJI(Grad sch agric, Kindai Univ.), Daisuke HAYASAKA(Fac Agric, Kindai Univ.)

外来種問題の定着・拡散の段階では,対象種の早期発見よる初期対処が非常に重要である.とはいえ,定着・拡散の初期では,対象種の個体数が少ない場合が多く,発見が難しい.そのため,精確なリスク評価にもとづく異なる段階への移行の予測が重要となる.しかし,外来種の動態の予測にかかる知見の集積は十分とは言えない.したがって,これら課題の解決には,外来種の定着・拡散要因のさらなる理解が欠かせない.外来種の生存率に対する主要な律速要因のひとつに,捕食者による捕食が挙げられる.もし,効果的に捕食を回避できるなら,外来種の定着・拡散はより確実なものになると考えられる.しかし,外来種に着目して捕食回避能力を調査した事例は,現時点でほとんど知られていない.本研究では,特定外来生物であるソウシチョウLeiothrix lutea Scopoliに,異なる3種類の捕食者(猛禽類,ネズミ,ヘビ)を対峙させる実験を行った.そして,外来種の侵入地における生存戦略のさらなる理解を目指し,外来種の生存における捕食回避能力の有効性を評価した.また,外来種の定着・拡散を予測し,初動対応につなげるうえでの要点について考察した.実験の結果,ソウシチョウは,ヘビに対しては観察行動をおこなったが,その他の捕食者には威嚇行動を示した.また,威嚇された捕食者間(猛禽類 vs ネズミ)で,威嚇の際のいくつかの要素に差が見られた.これら結果は,ソウシチョウが捕食者の種類や脅威に応じて捕食回避行動を適切変化させたものと推察される.そして,これらの変化は,本種が侵入地において生存するうえで非常に有効な特性であると考えられる.他方で,本種と同様の応答変化を示す事例は,他の分類群の外来種からも報告されている.したがって,外来種による定着・拡散の段階への移行の予測には,さまざまな分類群において,捕食者との関係を考慮することが不可欠であろう.


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