| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-062  (Poster presentation)

視覚か振動か?ヒメイトアメンボの対捕食者行動を引き起こす捕食者シグナル【A】
Visual or vibrations? Exploring predator cues that trigger antipredatory behavior in the marsh treader Hydrometra procera【A】

*石津智史, 立田晴記(九州大学)
*Satoshi ISHIZU, Haruki TATSUTA(Kyushu Univ.)

被食者は自身の適応度を上げるべく様々な対捕食者戦略を進化させてきた。その中で自身の体を左右あるいは上下に揺らす行動が様々な種で知られており、カモフラージュや追跡抑止信号、驚愕反応など捕食回避における様々な適応的意義が示唆されている。水生カメムシ目の一種であるヒメイトアメンボHydrometra proceraは脚の屈伸によって体を上下に揺らす行動 (屈伸行動) を示す。予備観察から、捕食者であるヌマガエルFejervarya kawamuraiが周囲に存在する場合に屈伸回数が増加する様子が見られた。そこで、屈伸行動が捕食回避に役立っているとする可能性を検証するため、捕食者由来の異なる刺激をヒメイトアメンボに提示して屈伸行動の変化を調べた。屈伸回数は捕食者を視覚的に感知することで増加することが他種で知られているほか、本種が含まれるカメムシ目の昆虫は弦音器官により振動刺激に反応して捕食回避行動をとる種が知られていることから、ヌマガエル由来の視覚刺激と振動刺激を本種に提示して屈伸回数の変化の有無を調査した。
まずヒメイトアメンボに対してヌマガエルの模型を提示したところ、屈伸回数の変化は見られなかった。一方でヌマガエルがジャンプあるいは歩行した際に生じる振動を記録し、プレイバック実験を行ったところ、屈伸回数は有意に増加した。しかし、正弦波振動やホワイトノイズ振動を提示しても屈伸回数は変化しなかった。これらの結果から、ヒメイトアメンボはヌマガエルの動きによって生じる振動刺激を感知して屈伸行動の頻度を上げていると考えられた。これは捕食者振動がヒメイトアメンボの屈伸行動を引き起こす鍵刺激(key-releasing stimulus)になっていることを初めて明らかにしたもので、本種の屈伸行動が捕食回避に役立っていることを示唆している。


日本生態学会