| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-065  (Poster presentation)

異なるコロニーの混合がシロアリのグルーミングと栄養交換に与える影響【A】
Effects of colony mixing termite grooming and trophallaxias【A】

*常見哲大, 北出理(茨城大学大学院)
*Akihiro TSUNEMI, Osamu KITADE(Ibaraki Univ)

 シロアリはほとんどの種で、雌雄の有翅虫がペアとなり一夫一妻制でコロニーを創設する。比較的多くのシロアリでコロニーの融合が知られており、融合が生じるとコロニーの遺伝的多様性が増加する。ミツバチでは人工授精で多数のオスと交配させて遺伝的多様性を高めるとコロニーの成長率や病原体に感染させた場合の生存率が上昇するという研究例があり、加えて、遺伝的多様性が高いコロニーは、コロニー間の病原体除去に関わる行動頻度のばらつきが小さくなることが示されている。したがって遺伝的な相違を反映して行動頻度のばらつきが変化し、これが労働効率に影響を与えることが示唆される。本研究では個体間でのグルーミング、肛門食栄養交換、口移し栄養交換を対象とし、ヤマトシロアリのコロニーのワーカー個体を混合させ、遺伝的な多様性の変化が行動頻度やそのばらつきに対して与える影響を調べた。
 本研究では、1個、2個、3個の野外コロニー由来のワーカーを混合した6個体からなる実験コロニーの行動観察を行った。口移し栄養交換の総回数は1野外コロニー由来で有意に多かったが、肛門食栄養交換、グルーミング総回数は処理の間で差はなかった。また由来する野外コロニーの違いは、グルーミングと口移し栄養交換総回数に有意な影響を与えた(GLM,尤度比検定)。コロニー内の個体間の行動頻度のばらつきには混合の仕方による差はなかったが、コロニー間のグルーミング頻度のばらつきは、混合処理により有意に小さくなった(無作為化検定)。また混合処理を行った場合、同巣由来の個体間の行動回数と、別巣由来の個体間の行動回数に差はなかった。本研究の結果は、異なるコロニー由来の個体を混合することで、コロニー間の行動のばらつきに違いが生じることをシロアリでは初めて示すものである。


日本生態学会