| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-070  (Poster presentation)

サーモカメラを用いた野生コウモリの出巣及び帰巣行動の動態計測【A】【O】
The measurement of flight dynamics of wild echolocating bats during their emergence/return from the cave using thermo cameras【A】【O】

*石坂亮成(同志社大学), 杉森僚太(同志社大学), 藤岡慧明(同志社大学), 波部斉(近畿大学), 川嶋宏彰(兵庫県立大学), 梶原将大(北海道大学), 飛龍志津子(同志社大学)
*Ryosei ISHIZAKA(Doshisha Univ), Ryota SUGIMORI(Doshisha Univ), Emyo FUJIOKA(Doshisha Univ), Hitoshi HABE(Kindai Univ), Hiroaki KAWASHIMA(Hyogo Univ), Masahiro KAJIHARA(Hokkaido Univ), Shizuko HIRYU(Doshisha Univ)

 自然界において多種多様な生物が群れを形成し,集団行動を行う事は生物にとって重要な生存戦略の一つである.その中でもコウモリは,エコーロケーション能力を駆使することで暗闇の中でも巧みな集団行動をとることができる.そこで本研究ではコウモリの集団行動を観察できる出巣と帰巣の場面に着目し,その飛行パターンについて調べた.観測は,コウモリのねぐらである廃隧道の入り口付近に2台のサーモカメラを用いて撮影を行い,同時にマイクロホンを設置し,エコーロケーション音声よりコウモリの種を判別した.音響データの解析から,キクガシラコウモリ,モモジロコウモリ,ユビナガコウモリの順に3種の出巣が確認できた.映像からは,照度が0 lxになる日没からの9分間で15個体であったのに対し,その直後の1分間で10個体以上の出巣が見られたことから,出巣の開始が暗闇になるタイミングと合致することが確認できた.さらにその30分後には1分当たりの出巣個体数が最大(321個体)となり,出巣行動は約1時間で終了した.総出巣個体は5978個体であり,本計測の前年の同時期と比較すると2割増加していた.次に,時間経過ごとに出巣個体数の異なる6場面を10秒間切り取り,各個体の飛行ルートを分析したところ,①完全出巣/②出巣後直ちに引き返す/③その他の3つに分類することができた.日没後照度が0 lxになるまでの出巣は9割以上が②であり,廃隧道外の明るさを検出し自らの出巣の判断を決定づけていると思われる.出巣個体数が最も多い中盤から終盤の場面では7割以上が①であった.一方,別日における,照度が1 lxよりも大きくなるまでの約30分間の計測で,出巣個体数の約8割の個体が帰巣し,最後の個体の帰巣は照度1 lx以上になる約3分前であった.今後はサーモカメラによる3次元構築の手法を確立し,集団飛行中における種による飛行の違いについても分析する予定である.


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