| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-074  (Poster presentation)

性選択は質的な形質の多型維持にどのように貢献しているか?-ナミテントウを例に-【A】
How does sexal slection contribute to maintaing polymorphic Harmonia axyridis?【A】

*矢野誠也(弘前大学)
*Tomoya YANO(Hirosaki Univ.)

種内で複数の表現型が存在する種内多型は多くの動物分類群で報告されている。このような種内の表現型間で適応度が異なる場合には、集団はある1つの表現型に固定されることが予測される。したがって、種内多型の維持を考えるには、表現型間で適応度に差を生じさせる選択圧と、その選択圧に拮抗するような選択圧を考える必要がある。種内に多型をもつナミテントウは紅型と黒型の二型が存在することが分かっているが、この二型が維持されている要因はわかっていない。本研究では、ナミテントウを用いて、繁殖戦略の時間的変異性や地域間での選択圧の変異性に着目して、多型が維持されている要因を検証する。
 まず、雌の選り好みや雄の繁殖投資量が季節や斑紋で異なるかを検証するために、交配実験を行った。その結果、季節間で雌の選り好みに違いは生じていなかったことから、多型維持には効いていないことが示唆された。雄の繁殖投資量では、表現型の異なる雌雄間の交配、すなわち異型交配において、交尾後ガード時間が有意に長くなっていた。したがって、雄は自身とは異なる斑紋の雌に対して多くの投資を行うことで、斑紋間での遺伝子流動が促進され、集団内での多型の維持に関与している可能性が示された。
 次に、日本国内の9地点から採集されたナミテントウのCOⅠ領域の遺伝子を分析したところ、地域間で遺伝的に分化していなかった。このことから、集団間での個体の移動が多く、遺伝子流動が頻繁に生じていることが示唆された。
本研究により、ナミテントウの種内多型は、異型交配の促進と遺伝子流動によって維持されていることが示唆された。


日本生態学会