| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-076  (Poster presentation)

方向統計学とベイジアンノンパラメトリクスによる野生動物のactivity patternの推定【A】【O】
Estimating of activity patterns of wildlife using directional statistics and a Bayesian nonparametrics approach【A】【O】

*矢島豪太, 中島啓裕(日本大学生物資源)
*Gota YAJIMA, Yoshihiro NAKASHIMA(Nihon Univ.)

野生動物が1日のうちのどの時間帯を利用するかは,その種が占める生態ニッチを理解するうえでも重要な基本情報である.これまで動物の活動時間帯は,進化や形態,生理的な特性によって制約される固定的な行動形質と見なされ,同種内のみならず,系統関係の近い種でも似通っているとされてきた.一方で,最近の研究では,野生動物の活動時間帯はある程度可塑性を持つことがわかりつつある.そこで本研究では,活動時間分布のパターンを定量的に比較するための階層ベイズモデルを構築した.そのうえで,開発したモデルを自動撮影カメラで撮影された千葉県房総半島に生息する中大型哺乳類10種を対象に適用した.構築したモデルでは,活動時間分布を加算有限個の無限次元混合von Mises分布で近似した.さらに,個々の観測地点の観測時間集合を,不確実性を考慮した上でこれらの分布の中のいずれかに分類することを試みた.その結果,イノシシやシカ,キョンなどの大型哺乳類は,カメラ設置点や季節によって,異なるいくつかの分布パターンを示すことが明らかになった.一方で,アライグマやタヌキ,ハクビシンなどの中型食肉目は,大型種に比較して少ないパターンを示した.さらに,種間の分布パターンは(大型種と中型種においても)互いに類似する有限個のパターンに分類できることが明らかになった.活動時間帯を比較する従来の方法は,時間を恣意的に離散化した日周表現型(昼行性や夜行性など)に分類し,その出現頻度を評価するものである.これに対して,本研究で開発したモデルは活動時間の分布そのもの情報を損なわずに比較可能にした.実際の適用結果から,野生動物の活動パターンは,系統関係の距離にかかわらず,共通したいくつかのパターンの「鋳型」を持ち,環境や季節によってその中のいずれかのパターンを示すことが示唆された.


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